豪雪地帯の野生のメダカってどうやって冬越ししているの?(前半)


豪雪地帯で田んぼや用水路をのぞくと、冬には一見なにも生き物がいないように見えます。それでも春になると、どこからともなくメダカたちが現れますよね。では、雪が積もるような寒い地域で、野生のメダカはいったいどうやって冬を乗り切っているのでしょうか。

 まず覚えておきたいのは、「水は簡単には全部凍らない」ということです。表面に氷が張っていても、底の方には4度前後の水が残りやすく、そこがメダカの冬の避難所になります。メダカたちは寒くなると、水底近くでじっと動きをおさえ、あまりエネルギーを使わない「省エネモード」で過ごしています。

 豪雪地帯では、この水面の氷と積もった雪が「フタ」の役割を果たし、冷たい外気から水中を守ってくれます。雪は意外にも断熱材のような性質があり、積雪が厚いほど、水温が急激に下がりにくくなるのです。人間から見ると厳しい環境ですが、メダカにとってはかえって安定した水温が保たれる、ありがたい毛布のようなものとも言えます。

 もうひとつ大事なのが「隠れ家」です。田んぼの畔のくぼみや水路のよどみ、沈んだ落ち葉や水草のあいだなど、外敵に見つかりにくく、水の流れが弱い場所が冬のメダカのたまり場になります。そこではエサもほとんど食べず、春までじっと体力温存に徹します。

 また、一部の個体は卵の状態で冬を越すと考えられています。親魚が寒さで死んでしまっても、春に水温が上がると卵がかえり、新しい世代が姿を見せるわけです。雪深い土地で毎年当たり前のようにメダカに出会えるのは、こうした小さな魚たちのしたたかな「冬越し戦略」のおかげなのです。