皆さん、ダルマメダカはご存知でしょうか。そうです、あの尾びれの短いプリッとしてなんとも言えぬ可愛さをみにまとうメダカです。
ぬくもりめだかでも、ダルマメダカは15匹程度います。泳ぎ方が可愛いんですよね。癒やしです。
さて、ダルマメダカ、実はダルマ同士をかけ合わせてもなかなか産まれてきません。メダカ愛好家で知られているノウハウが、高水温で卵を孵化させるとダルマが産まれるということです。ひょっとしたらこのノウハウを耳にした方はいらっしゃるかもしれません。
では、なぜ高水温だとダルマになるの?という理由が知りたくなりました。そこでいろいろな文献などを調査し、調べました!

結論(先にざっくり)
ダルマ=体が短いメダカは、たいてい背骨(脊椎)の数が少ない/形が変わることで起こります。卵の時期を高めの水温で育てると、でき上がる背骨の数や形に影響が出やすいため、ダルマ体型の発生が増えることがあります(ただし遺伝的な素質も大きく関わります)。 (CDN Science Publishing, PMC)
しくみ(やさしく解説)
1) 「背骨の数」は卵の時の温度で変わりうる
魚では、卵の中で体ができるときの温度が、将来の背骨の数に影響することが知られています。メダカでも、胚(はい:卵の中の赤ちゃん)期の温度が背骨の数に効くことが古くから示されています。背骨が少なくなると体は短く見えます。 (CDN Science Publishing, PMC)
- 補足:論文は、「メダカで、遺伝(生まれつきの性質)と温度の両方が、数(メリスティック形質:ここでは背骨の数)に影響する」という報告です。 (CDN Science Publishing)
2) 体の「こま切れ」を作るリズムが温度で変わる
専門語:ソマイト=体の“こま切れ(節)”のもと。のちに背骨などになる部品。
専門語:セグメンテーション・クロック=その“こま切れ”を一定のリズムで作る「体内時計」。
→ 高温だと、この時計のテンポや胚の伸び方が変わり、できる“こま”の数(=最終的な背骨の数)に影響します。数が減ると体は短くなりやすい、というわけです。 (PMC, Anatomy Publications)
3) 高温ストレスで”骨の形の異常(融合など)”が増えやすい
魚全般の研究で、高いふ化温度にさらされた群れは、背骨の変形や融合が増える例が報告されています。こうした骨格の乱れも短胴化(ダルマ的体型)につながります。 (BioMed Central, PubMed)
4) 高水温だと水中の酸素(DO)が少ない
専門語:溶存酸素(DO)=水に溶けている酸素。
水はあたたかいほど酸素が溶けにくいので、高水温ではDOが下がりやすいです。卵や赤ちゃん魚に酸素が足りない状態は、骨の作りにも悪影響になりえます。 (USGS, US EPA)
ただし(大事なポイント)
- 遺伝(生まれつきの素質)があってこそ出やすくなる場合が多い
メダカには背骨がくっつきやすい変異(例:古典的な「fused(ふゅーずど)」変異)が知られており、「遺伝的な短胴化」のモデルとして研究されてきました。こうした遺伝素因に高水温の環境が重なると、短胴がより出やすくなると考えられます。 (Wiley Online Library) - いつ(どの時期)温度が高いかが効く
「どの発生段階が温度に一番きくのか」という“効く期間(temperature-effective period)”がメダカで議論されており、卵の早い段階が重要だと示されてきました。 (PMC)
まとめ(要点だけ)
- 卵の時の温度が、でき上がる背骨の数・形に影響 → 高温で短胴(ダルマ)が増えうる。 (CDN Science Publishing)
- 体節の時計は温度でテンポが変わる → 背骨の数が変わりうる。 (PMC)
- 高温ストレスで骨の異常が増える例もある。 (BioMed Central)
- 高温=酸素が少ない水 → 胚の骨づくりに不利。 (USGS)
- ただし、遺伝の素質がある系統ほど、高温の影響が出やすい。 (CDN Science Publishing, Wiley Online Library)
※ここでの「高水温」は、研究ごとに範囲が違います(魚種や系統で最適は変わる)。メダカでの詳しい温度-時期依存は古典研究の再確認や系統差の検証が必要です。 (PMC)
参考(用語の超ミニ解説)
- 脊椎(せきつい):背骨のこと。数や形で体の長さ・形が変わる。
- ソマイト:背骨や筋肉の“もと”になる「体のこま切れ」。
- セグメンテーション・クロック:ソマイトを一定間隔で作る体内の“リズム”。 (Anatomy Publications, PMC)
※写真はぬくもりめだか自慢のダルマメダカです。お気に入りでマーケットには出しておりません。